アルバム『ATTA』の曲解説
「愛の進路」 "リアリストはおてあげさ"と歌っているけど、でも現状に悲観的になるのではなく、"ダメなものはダメ、残るものは残る"という意味で"怖くてもう進むしかない"という気持ちで歌っている。"もう大丈夫、必要なのはひとつしかない、愛だぜ"、みたいな。
「TIDA」 長年の友人であり、私と同じように母でもあり、尊敬しているYOSHIMIOからの曲(ボアダムス、OOIOO、フリー・キトゥンなど、多岐にわたって活躍するYOSHIMI。映像作家キム・ヨンスンの作品『雲南 COLORFREE』の音楽制作も担当)。はじめはどんな歌詞が合うのか、全くわからなかったけれど、何度も聴いているうちにリズムの土臭さを削ぐために英語の歌詞を乗せることにして、冒頭には奄美島口も取り入れた。(YOSHIMIは)30年代くらいのフリージャズとガムランを混ぜるみたいな音楽をイメージしたって言ってたかな。ネイティヴ・アメリカンの音楽に似た感じもあったし、歌い継ぐ感じの曲になったらいいのかな、と思って。"てぃだ"とは奄美の言葉で"太陽"の意。
「Purple Rain」 大人のフェアリーテイルというか、夢の歌。
「KOSMOS」 この歌詞は感覚的に造語で書き上げたナンバー。今回、閃きを重視して作詞したんだけど、造語もそのひとつ。大魔王がいても子供が泣かないように、"怖くないよ"と、お茶を出しておこうかってこと。ひどいことをやっている人たちもいるけど、その人たちもお茶を飲むのは好きなはずだし、自分の子供や親のことは愛しているはずだし、ただ環境とか何かが違いすぎているだけじゃない? 私はもともとファンタジーが大好きだし、この歌詞は自分の中から自然に生まれてきた感じ。
「2008」 これは妊娠したことがきっかけになって生まれた曲で、自分のために歌った決意表明の歌でもある。そして出産前に、前から絶対に行きたかったインドへ行ったことで、そこでの体験も歌詞に反映されている。凄く自分自身と向き合った歌であり、この曲が完成したことで、今から思うと凄く吹っ切れたものがあった気がする。
「Reveilles-toi! 目覚めよ」 この曲をもらった時に、とても日本語で歌い上げるタイプの曲には思えなくて、パートナーの母親がフランス人ということもあって、フランス語で試みたの。ここの歌詞では脱二元論へと向かっているけど、いつも物事の両面性を歌いたくなるのは、"UA"(スワヒリ語で"花"と"殺す"の意)という名前をつけた時から、ずっとそう思っているから。ただ、現代がどこか二つにバチッと分かれていて、その分離が不安感を煽るんだと思う。"(何事も)両面性がある"とわかっていればいいけど、あまりに双方が隔離されていることが多いから、自分もビビッてしまうんじゃないかな。
「アスパラガス」 これはもう楽しみながら、クスクス笑いながら歌詞を書いた歌。私にとって、(松田)聖子ちゃんの歌謡曲を彷彿させるようなイメージがあって、"恋も卒業なのね"という主婦の台所ソング。ちょうどアスパラガスを自宅の庭で育て始めた時期だったし。
「picnic_20c」 内橋(和久)くんの奥さんに、前作の「Panacea」に続いて作詞してもらった作品。これは1989年に起きた「ヨーロッパ・ピクニック計画」をテーマに書かれている。曲は最初はもっとエスニックな感じで暗黒エスノと形容されていたくらいだったけれど、レコーディングの段階で一気に転じてすごく爽やかな曲になった。音楽の奇跡を一番見た曲。
「13番目の月」 これはラヴソング。カナダ人の友人からもらったムーンカレンダーがきっかけに、このタイトルをつけました。
「怪物」 歌詞を書くのに一番苦労した曲。シリウス(大犬座のα星)は、ナイル川の増水のサインとして出現する星としての意味を持つため、ここでは"地球にとって最後の星は未だ現れない"という意味で使った。怪物というタイトルはLITTLE CREATURESにも由来してます。あと、この世とあの世の合間みたいなところで、怪物って人間かもしれないし、隣りのあなたかもしれない、もしくは目に見えないお化けみたいなものかもしれないけど、人間のやっていることの方が怪物的だというか。だから、歌っているのは愛すべき怪物について。
「Familia」 最後に完成したナンバー。久々に朝本(浩文)さんにプロデュースをお願いした。今まではステージに立つことで本番のスイッチが入っていたけれど、今は家庭が大切で、キッチンにいることこそが本番。シニカルな歌詞で歌うマダムのキッチン・ソングなんだけど、同じキッチンが舞台の「アスパラガス」よりも、もっと生活感を出してみた。
「月がきえてゆく」 TV番組での共演や、スピードスターの15周年イベントでの共演を通じて、細野(晴臣)さんと"何か一緒にやりましょう"という話になって、今回曲を書いてもらうことになった。お願いしたのは、"宮崎駿さんの次なる作品の架空の主題歌"ということで......。作詞は青柳(拓次)くんに、初めて日本語詞を依頼。
「トキメキ」 これもYOSHIMIOの作品。絶対にラストにふさわしい曲だと思って、この位置にした。歌ができていくのが最高に面白かった。即興の音楽なのかな?っていう音楽で、でも彼女の中では完璧にメロディが決まっていて、これでしかないわけ。同じ繰り返しとかも全然なく、これまで14年間やってきたなかで全くなかった曲。やっぱり思ったとおりの人と言うか、すごいなと思った。